■人にやさしいまちづくり/Ⅱ■
「人にやさしいまちづくり講座」の後半では、10人を1グループとしたグループ学習がありました。それぞれのグループで決めた場所で「人にやさしいまちづくり」について検証し、提案をするというものです。私のいたグループは、“豊川稲荷の門前町”のまちづくりについて取り組みました。
まずは門前町を歩いてみることからスタートし、別の日には市営駐車場から豊川稲荷正門までの道のり(門前通り)を、車椅子とベビーカーを押して歩いたり、門前町の店主さん達にバリアフリーなどの取り組みについて聞いてまわりました。
ただこういった事をしていると、ついつい高い位置からここがいけない、あそこがいけないと悪いところに目を付けては批判してしまいがち。私たちのグループに同行していてくれたアドバイザーの方の助言がなかったら、何のためらいもなく私もそうなってしまったことでしょう。
そのアドバイザーの方は、「突然来た人が数回だけ門前町を見て、あそこが悪い、ここが悪いと言っても、毎日門前町のことばかり考えている方々の足元にも及ばないだろうし、失礼だと思うよ。」「段差などのチェックばかりして歩いていても良い提案などできないと思うよ。」「外から見た意見として伝えていくのは歓迎されるだろうね。」など、何気なくアドバイスしてくれるのです。そして明るく「さあ、暑いからカキ氷でも食べましょうか!」「どこでお昼を食べようか?」と色々なお店に入ることをそれとなく提案してくれるのです。
ハッと気付いたのですが、この提案は頭の固いお役人になりかけていた私たちを、お稲荷さんに参拝に来た人や地元の利用者の立場に変えてくれたのです。ほんのわずかな時間で検証して提案するのだから、大それた提案をすることなどなかなかできない。ならばこうしてお店に入って食事をして楽しんで、門前町により近づいてみることが大事。利用者の視点になってはじめて“人にやさしいまちづくり”の提案が少しできると言うわけなのですね。
このグループ学習を発表会で発表した時、発表に対するコメントをくださる先生に「車椅子に自分達が乗って検証してたらいかんねー。あんた達はせいぜい乗ったって数時間でしょ?!車椅子を使って生活している人にどうして協力してもらおうと思わんかったわけ?」と指摘されました。全くごもっともです。どうしてその発想がなかったのかと情けなくなりました。
人にやさしいまちづくりは、“かたち”から入るのではなく、“人の心”が大切だということをとても強く感じさせられました。私たちのグループの報告書はメンバーのひとりのこの言葉で締めくくられています。「心が動いて はじめて人が動く。 人にやさしいまちづくりとは 地道な努力の積み重ねでもある。」