Interior Coordinate Office

■子供たちに教えられ■

昨年の7月から今年の2月まで、ある小学校へ「クラブティーチャー」として伺っていました。地域の人に“ものづくりなどの先生”として来てもらい、学校と地域が一体となって子供たちの豊かなこころを育もう!という取り組みなのです。私は地域住民ではありませんでしたが、声がかかったので喜んで引き受けたのでした。

インテリアの授業は、「カラー」「インテリアスタイル」などを、なるべく目で見て覚えてもらえるように毎回進めていきました。
2月の最終日には、4時間かけてそれぞれが製作した「夢の部屋」をみんなの前で発表してもらいましたが、その完成度は私を驚かしてくれるほど素晴らしいものでした。

その発表の後、こちらでテーブルセッティングした机で、ジャズやクラシックを聞きながらハーブティーとパンを食べました。そして、用意したパンの「香り」や「柔らかさ」、「見た目」、「味」を子供達に意識してもらいました。食事は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5感を感じながらしているんだということを、理解してもらったのです。
「いつも食べる給食を、このテーブルで食べたほうがおいしく感じると思う。」
「なんか、おちつくー。」「パンも、のせる入れ物をかえるだけですっごくおいしそう!」
子供達の素直な反応が、うれしくて仕方ありませんでした。そして、即実行してもらえる様、お金をかけなくても素敵なインテリアにすることができることを伝えたのでした。
そして私は、一番やんちゃだった4年生の子の「なんか心がおちつく-!」の言葉で、ちょっとした配慮だけでも“豊かな時間”を子供達が感じてくれることを実感したのでした。

小学校での授業の終わりとして、どうしても伝えておきたかったことがあり、音楽を聞きながらパンを食べている子供達にまず、街並みの写真を見てもらいました。
スイス、ドイツ、パリ、ロンドン、ギリシャetc…。子供達はどの写真を見ても「きれい!」「なんか、屋根の色が全部一緒できれい!」「建物が古くてもきれい!」と感想を述べていました。その後、日本の田舎の写真を見せても「きれい!」と感じてくれました。

最後に、色々な建物が入り混じっている日本の街並みの写真を見せたところ、すかさず声を揃えて「きたなーい!!!!!!」と言うのです。この反応に、子供達のきれいなものを見る感性の鋭さをとても強く感じ、ますますうれしくなってきたのでした。

そう感じてくれた子供達に、「インテリアは自由に、自分の好きなようにしていいよ。でも家の外側は、自分勝手に作ってはいけないんだよ。外国のきれいな街は、決して新しい建物ではないけれどきれいだったよね。それは、まわりの建物と調和させているからなんだよ。日本も昔は、調和を考えていたからとてもきれいだったんだよ。今、そのことを忘れてしまっている大人が多いけれど、みんなはそのことを忘れないでね。」と話をし、授業を終わりました。

ある日、山形のインテリアコーディネーターと小学校での授業について電話で話をする機会がありました。彼女も、日本も欧米諸国のように小学生のうちから住居に関して学ぶべきだと考えている人でした。話をしていてお互いにとても驚いたことがあります。それは、小学生と大学生の違いです。彼女の知っている大学教授が以前、偶然にも私と同じ質問を学生達にしたことがあるそうです。大学生達は、ヨーロッパの古い街並みを「美しい!」と言ったそうです
(小学生と同じで安心…)。ところが、日本の街並みを見せたときに「それはそれでいいんじゃない。」という感想を述べたそうです。大学生までになると、今の現状をそのまま受け止めてしまうようです。

子供の持っているこの素晴らしい感性を、素直に伸ばしてあげられたらどんなにすばらしいだろうか。私たち大人が変わっていけば、この素晴らしい子供達は、ますますその能力を発揮していけるのだろうなぁと感じたのでした。

校長先生がおっしゃっていました。「地域の方々と子供達との交流が、まず第一の目的です。」と。交流によって、さまざまな影響や刺激、安心感を子供達にもたせてあげることが出来る事を、校長先生も、他の先生方も地域の方々もご承知の上で、実現させていらっしゃるようでした。この小学校の取り組みで、とても多くのことを学ばせていただきました。  教えてくれたのは子供たちでした。

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