■ちいさな訪問者■
インターネットが普及して、アメリカでは自宅で仕事をする“SOHO(Small Office Home Office)”が増えているそうですね。意味合いがちょっぴり違うかもしれないけれど、当事務所も先端を行く(?)SOHO。自宅の一室である事務所の前は、我が家の庭。
緑を見ながら、風を感じながら仕事をしています。
仕事の合間には家事をしたりして、住宅を造る側としては住む人の気持ちが分かるとても有り難い環境なのです。訪問販売の人が来たり、ご近所さんが野菜を持ってきてくださったりと、案外訪問者が多いもの。プラス、仕事の関係者が来ますので、本当にいろいろな訪問があります。
毎日やってくる訪問者には、小鳥たちがいます。あいにく1年を通じてやってくる鳥たちの名前は、スズメやヒヨドリ、メジロぐらいしか分からないのですが…。
ある日仕事をしていると、“ガツン!”というもの凄い音が聞こえてきました。鳥がピカピカに磨いた窓ガラスにぶつかってきたのです。幸いすぐに飛び去って行き、ひと安心。
いつもはレースのカーテンが掛かっているのに、丁度洗濯中で窓には何もかかっていなかったのです。鳥は、まさかガラスがはまっているとは思ってもみなかったのでしょうね。そんなに大きな窓ではないのになぁ。
その時、以前見た光景をふと思いだしました。数年前に新しくオープンした美術館。
大きな池や木々に囲まれた美術館は、とてもモダンなものでした。ただ、壁面がすべてガラスであったのがとても気になったのです。鳥たちにはガラスが見えず、ガラスに衝突してしまうから。ヨーロッパのある国では、森の中に大きなガラスを使った建物は建ててはいけない法律まであるそうです。
案の定、次にその美術館に行った時、とても美しい鳥がガラスの壁に衝突して死んでいました。私たち人間の、ちょっとした配慮でこんな事にはならなかったかと思うと、とても残念でしかたありません。
ちいさな訪問者は、毎日かわいい声で心を和ませてくれています。不要になった食べ物も、庭に置いておくときれいに食べてくれます。ちいさな訪問者は、実は“訪問者”ではなく、一緒にこの環境の中で暮らしている共存者なのですね。その事を忘れないようにと、あの小鳥は身をもって知らせに来てくれたのでしょうか。