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■ヨーロッパ珍道中■

旅行に出掛けるのは、ちょっとした刺激もおおく、気分転換になるものです。特に海外などに出掛けると、食べ物も建物も文化も違うので(当然人も!)、刺激やエネルギーが多く、チャンスがあれば飛んでいきたくなります。

先週の日曜日、急に決まったドイツ・スイス・パリの旅行から帰ってきました。
ドイツ、スイスでは素朴で自然の多い街や山を観光し、その後フランスのパリに滞在するというものでした。パリはちょうどパリ祭の真っ最中で、かつ、アメリカ人のホリデイの時期と重なり、それはそれはすごい人の数でした。パリにブランド物を買いに行く人も多いと思いますが、私の興味あるものはインテリアや建築に関するもの。パリはどこに行っても私を立ち止まらせてしまうところばかりでした。

パリにお買い物に行った日本人から“パリの人はプライドが高くて、観光客には冷たい態度をとる。”という言葉を何度か聞いたことがありましたが、想像以上に親切なパリっ子ばかりに出会いました。道を尋ねると、英語で丁寧に教えてくれるのです。ただ、店員さんなどに、感じのいい方が少なかったのは確かでした。特に地下鉄の駅員さんのお客さんに対する非協力的な態度は、おかしくなってしまうほど。

私と友人は、ホテルからベルサイユ宮殿へ地下鉄を利用して行きました。切符を購入する時に困らないで言えるようにと、紙にフランス語で「ドゥ・ビエ・シル・ブ・プレ(2枚の切符を下さい)」とカタカナで書いておきました。友人が「私が買ってくるね!」とその紙を持って切符売り場に行ったのはいいのですが、窓口でとっても嫌な顔をされているのです。何が問題なのかしら?と行ってみると、ナント友人はカタカナで書いたその紙を、駅員さんに向かって見せているだけだったのです!!!声に出して言わなければ分かるはずもなく..。

日本では優秀なキャリアウーマンの友人からは、想像もできないほどギャップある行動に、笑いをこらえることができませんでした。”旅の恥は掻き捨て。”こんな言葉があると言うことは、旅では恥を掻きやすいのでしょうか。あの駅員さんの迷惑そうなイヤーな顔は今でも鮮明に浮かんできます。

嫌な顔をされるのは、こちらにも何か原因がありそうです。その原因は、端から見ている者にとってはおもしろいことも多そうですが。

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■ちいさな訪問者■

インターネットが普及して、アメリカでは自宅で仕事をする“SOHO(Small Office Home Office)”が増えているそうですね。意味合いがちょっぴり違うかもしれないけれど、当事務所も先端を行く(?)SOHO。自宅の一室である事務所の前は、我が家の庭。
緑を見ながら、風を感じながら仕事をしています。

仕事の合間には家事をしたりして、住宅を造る側としては住む人の気持ちが分かるとても有り難い環境なのです。訪問販売の人が来たり、ご近所さんが野菜を持ってきてくださったりと、案外訪問者が多いもの。プラス、仕事の関係者が来ますので、本当にいろいろな訪問があります。

毎日やってくる訪問者には、小鳥たちがいます。あいにく1年を通じてやってくる鳥たちの名前は、スズメやヒヨドリ、メジロぐらいしか分からないのですが…。
ある日仕事をしていると、“ガツン!”というもの凄い音が聞こえてきました。鳥がピカピカに磨いた窓ガラスにぶつかってきたのです。幸いすぐに飛び去って行き、ひと安心。

いつもはレースのカーテンが掛かっているのに、丁度洗濯中で窓には何もかかっていなかったのです。鳥は、まさかガラスがはまっているとは思ってもみなかったのでしょうね。そんなに大きな窓ではないのになぁ。

その時、以前見た光景をふと思いだしました。数年前に新しくオープンした美術館。
大きな池や木々に囲まれた美術館は、とてもモダンなものでした。ただ、壁面がすべてガラスであったのがとても気になったのです。鳥たちにはガラスが見えず、ガラスに衝突してしまうから。ヨーロッパのある国では、森の中に大きなガラスを使った建物は建ててはいけない法律まであるそうです。

案の定、次にその美術館に行った時、とても美しい鳥がガラスの壁に衝突して死んでいました。私たち人間の、ちょっとした配慮でこんな事にはならなかったかと思うと、とても残念でしかたありません。

ちいさな訪問者は、毎日かわいい声で心を和ませてくれています。不要になった食べ物も、庭に置いておくときれいに食べてくれます。ちいさな訪問者は、実は“訪問者”ではなく、一緒にこの環境の中で暮らしている共存者なのですね。その事を忘れないようにと、あの小鳥は身をもって知らせに来てくれたのでしょうか。

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■やすらぎのもとで■

そこに居るだけで心がやすらぐという空間があります。しかも、座ったり、横になるなどの
リラックスできる格好で過ごすことができたら、立ちっぱなしでいるよりやすらぎを感じることも多いものです。 
 
仕事柄、休日に私は建物を見ながら、絵画を観て、疲れた体を休めよう!と美術館に行くことがあります。ところが、人の波に押されてゆっくり座って観ることができないからでしょうか、無機質で「冷たい」と感じる空間にいるからでしょうか、「やすらぎ」とはほど遠い「疲れ」を感じて帰ってくることが何度かあります。これは私のわがままなのかしら…?美術館に「やすらぎ」を求めてはいけないのかしら?
 
そんな中、車で1時間あまりの場所に私は「やすらぐ美術館」の1つに出会うことができました。ちょうど静岡県天竜市にオープン(98年4月)したばかりだった「秋野不矩(アキノフク)美術館」です。街を見下ろすことのできる小高い丘の上に建ち、緑に囲まれたその美術館は、入場制限をしていたこともあり入場するのに1時間かかりました。でもなぜか、並んで待っているときから心がやすらぐのです。ウグイスが鳴き、心地よい風が吹き、緑が美しいのです。何よりも、外壁にワラを混入したモルタルと土、そして木を使っている2階建ての小さな美術館が、「自然の多い環境に調和」していて、見ているだけでホッとさせてくれるのでした。
 
中に入った途端に私は、自然素材で仕上げられている「秋野不矩美術館」の”とりこ”になっていました。作品をほこりから守るために、入口で靴を脱いであがり、さらに展示室に入るときはスリッパも脱いであがるのです。第一展示室の床には籐のゴザ、第二展示室の床にはうすいピンクの大理石が貼ってありました。素足で床を感じることができるのです。もちろんイスなどありません、床に座って観賞できるのです! !(冬は床暖房)
凹凸感ある白い壁は絵を引き立てていました。
 
90歳を超えてもなお現役という秋野不矩さんの絵は、この建物にとてもマッチした、大胆さの中にあたたかさを感じる素晴らしいものでした。「秋野不矩さんの絵」と、「里山の環境」、そして「座」という私たちの「生活習慣」に調和させたこの美術館は、やすらぎの他に「何か」を気づかせてくれます。

床に座っての絵画鑑賞がこれほどまでに心地よいのは、絵を見るという行為が楽であるからだけでしょうか? こんなやすらいだ気持ちで絵画に感激したのは初めてのことでした。